古きをたずねて新しきを知る。
解析データが示した伝統の技

実験風景
長い歴史が堅牢さを証明している穴太衆積ではありますが、現代の建築基準に適合するかどうかの実験数値データ が必要。そこで石垣が積まれる予定地に穴太衆積とコンクリートブロックによる擁壁を並べて実作し、積荷装置で土圧をかけて 擁壁の変位を測定する実験がおこなわれました。
最大荷重の基準は250トン。 より過酷な条件を満たすためにジャンボジェット機1機分という現実にはありえない重さをかけました。
実験開始からほどなく、穴太衆積の擁壁の中からピシピシという耳慣れない音が聞こえてきました。 石積みは部分的に最大13センチまで大きく変位しましたが、結局250トンの重さを支え続けました。 一方コンクリートブロック擁壁は変位こそ5.5センチと小さいものの、約200トンまで荷重した時点で、突然胴込めした 厚さ30センチのコンクリートがバリッと大きな音とともに割れてしまいました。石積は変位は大きいものの、コンクリート以上 の耐荷力が確認されたのです。
最先端技術でデータに現れた
「しなやか」な耐荷性

穴太衆積の構造図
京都大学大学院の大西有三教授のグループにより、不連続変形法というシミュレーションで穴太衆積の構造上の 特性が解析されました。石積の構造を忠実に再現したモデルを作成し積荷時の状態をシミュレーション。
結果は、認証試験の実測値と見事に一致しました。さらに阪神・淡路大震災クラスの地震の揺れの数値を入力してシミュレーション。 この結果も大きな変形はあるものの、逆にその変形で石積がしまり、石積の崩落などの擁壁の機能破壊までは起こらないという 良好なデータが得られました。